花酵母パンの「腸活」のおはなし
1.それぞれの花酵母によって香味が異なる。
我々が食用にしている微生物である酵母菌(イースト)は、Saccharomyces属(サッカロマイセス属)のSaccharomyces cerevisiae種(サッカロマイセスシルビシエ種)に属しており、酒酵母・ワイン酵母・ビール酵母 ・パン酵母として500種類程度知られています。これからの酵母は5千年以上前から人類が利用しており、その安全性が歴史的に認められております。[1]
日本酒や焼酎、ワインなどの醸造向け酵母は、日本醸造協会で頒布している「協会酵母」[2] を使っており、醸造原料による香味の違いはありますが、数種類の同じ酵母を使っているのが実情です。一方、最近人気のクラフトビールは多くの種類の香味が楽しめるように酵母の種類によってバリエーションも豊富です。
花酵母の酵母は、純粋分離した単一酵母を使っており、複数の未知なる菌が混在している自家製種起こしした自家製天然酵母に比べて、同定試験(rDNA試験法)により食用酵母であることを確認していますので安全・安心です。[3]
2.豊富な乳酸菌が腸内フローラを整える
酵母菌と乳酸菌は仲が良いことは良く知られています。特に製パンにおいては、ブドウ糖を餌に酵母発酵によりエタノールと炭酸ガスが排出され、アミノ酸系旨味成分とエステル香気成分を含むパン生地となります。炭酸ガスは小麦のグルテン膜を膨らませて、ふっくらとしたパンを作ります。
また複合微生物として乳酸菌は、酵母の培養過程で空気中の乳酸菌が共存して培養されます。乳酸菌からは乳酸が生産されパンの香味を醸し出してパンのpHを酸性にして静菌作用があります。[4]
乳酸菌が他の微生物に対して発揮する抑制効果として第一に挙げるべきものは、乳酸の生成とそれに伴うpHの低下です。食中毒細菌の多くは、食品のpHが5以下であれば生育しないか、あるいは生育してもその増殖速度は微々たるものとなり、一般にpH4以下では病原細菌の生育はまったく起こりません。[5]
このふたつの菌が複合微生物として伝統的なパンの製造法でパン種として用いられており、工業的に生産されたパン酵母(ドライイースト・生イースト・インスタント天然酵母)では作れない独特なパンの香味を生み出してくれます。また、植物由来の酵素を使うことで酵母菌と乳酸菌へミネラル供給と発酵のための触媒となり、最適なパン生地を保つことが出来ます。[6]
花酵母のパン生地には、たくさんの酵母菌と乳酸菌が含まれていますが、パンを焼く窯の温度は200℃近いので、これらの菌はもちろん死滅してしまいます(死菌)。仮に生きていいたとしても、胃酸で死滅してしまいます。酵母菌と乳酸菌は死菌でも腸内細菌のエサとなり善玉菌を育てる「育菌」(プレバイオティクス)として腸内環境を整えてくれます。[7]
因みに、花酵母食パンの乳酸菌含有率を分析したところ、花酵母パン生地1gに乳酸菌は1,000万個確認できました。乳及び乳製品の成分規格に関する省令では、ヨーグルトの場合1ml中乳酸菌が1,000万個以上なので、1g=1mlとしてヨーグルトと同等の乳酸菌が確認されました。[8]
3.自然素材のみを使用し、安全で体に良い
パンの原材料は、本来「小麦粉」「水」「塩」そして「酵母」だけです。しかし、コンビニやスーパーの棚に並んでいるパンの食品表示には、「小麦粉」「果糖ぶどうとう液」「ショートニング」「マーガリン」「パン酵母」[9]「発酵風味料」「乳化剤」「香料」「pH調整剤」「イーストフード」などが表示されています。
これらの添加物は機械で製パンするため、製造したパンを運んで販売するためと人工的に食感と足らないうま味出すため、保存期間を延ばすために添加されたものです。添加物すべてに目的があり悪意はないものの、出来れば口にしたくない化合物です。
花酵母パンの製パン方法は、22時間の発酵工程を経ておりこれらの不要な添加物を添加することなく、酵母と乳酸菌の発酵[10] 過程によって自然素材のみで製パンが可能であり、安全・安心で体に良くとっても美味しいリアルブレッドです。
パンは小麦粉にこだわったものが多いですが、小麦粉と同等に酵母にもこだわることにより、よりおいしいパンが焼けます。
4.日持ちがする
スーパーやコンビニの一般的なパンのpH値は5.2~5.3pHに比べて、花酵母パンの生地はpHが5以下なので静菌作用がありカビにくく、デンプンが老化しにくいので、パサつきが抑制されて日持ちがします。[11] 概ね焼成日から常温でも5日間は大丈夫です。日持ちの良さ、長時間持続する柔らかさは、乳酸菌の乳酸と酵素の働きといわれています。[12]
焼き立てパンはおいしそうに見えますが、バターを重ねたクロワッサンやデニッシュ生地パンなどは焼き立てがおいしいですが、花酵母のバケットや食パンは、でん粉が糊化して、焼成後3日目にリベイクすると香味が定着して一番おいしいです。
【エビデンス】
[1] 5,000 年以上の昔から人類は自然界に数えきれないほど存在する酵母を、食品やお酒などの醸造に活用してきました。ビール、ワイン、酒などの醸造あるいは製パンに使われる酵母はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属しており、それぞれビール酵母、ワイン酵母、酒酵母、パン酵母と総称されています。http://www.panpedia.jp/safety/natural-yeast.html 【酵母とは?】(一般社団法人 日本パン技術研究所)
[2] 酵母の多くは日本醸造協会より「協会酵母」として販売されています。http://www.jozo.or.jp/koubo/ 【協会酵母菌】
[3] 酵母菌の中には病原性酵母もあり、日本の食品衛生法第6条3項には、「病原微生物により汚染され、又はその疑があり、人の健康を損なうおそれがあるもの。」とあります。つまり、天然酵母パンといえどもどのような酵母菌を使っているかを説明する義務があります。http://www.mmjp.or.jp/yokojyuu/low/low/low_043.html#id_03 【食品等事業者の責務】(食品衛生法)
[4] 乳酸菌から生成される有機類は乳酸、酢酸が中心になるが、これらがパンに含まれるとpHが低くなる。http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/2017_08/002.pdf p.12 (モダンメディア63巻8号2017)
[5] https://www.nyusankin.or.jp/lactic/(一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会/発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会)
[6] 酵母の他に多種多様な乳酸菌などの微生物が増殖して、通常のパン(パン酵母だけで発酵させたパン)以上に独特な風味、香り、食感があります。http://www.panpedia.jp/safety/natural-yeast.html 【天然酵母パン】(一般社団法人 日本パン技術研究所)
[7] プレバイオティクス(prebiotics)は1994年にイギリスのGibsonとRoberfroidによって提唱された概念で、「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、宿主に有益に働く食品成分」と定義されています。つまり、プロバイオティクスが菌そのものの作用によって腸内環境を改善するのに対し、プレバイオティクスは有用な腸内細菌の餌となる食品成分を摂取することによって腸内環境を改善するということです。 https://www.danone-institute.or.jp/mailmagazines/backyear/4487.html (公益財団法人ダノン健康栄養財団)
[8] 東京農業大学応用生物科学部 醸造化学科の研究室で、花酵母パン生地から乳酸菌を分離して分析した結果。【花酵母パンから分離した乳酸菌】
[9] パン酵母の呼称は、日本では「イースト」という呼称が工業生産的なイメージがするとのことで「パン酵母」という呼称を使っています。天然酵母呼称されているものは、麹培地で培養したもの、果物・野菜から糖蜜液で培養したものがあります。どちらも同じ酵母菌ですが、工場で大量生産された酵母と小規模で培養された酵母の培養製造工程に差があります。
[10] 発酵とは、微生物がエネルギーを得るために有機物を分解する過程のことで、分解する過程で生成されるものが人間にとって有益である場合に「発酵」という言葉を使います。花酵母パンは発酵食品であり、穀物中の有害な酵素を分解し、小麦の天然ビタミン、ミネラル、および繊維の栄養価を最大にして、血糖値が上昇させず、消化しやすい食物にします。
[11] 有機酸生成に伴う pH の低下によって、酢酸、乳酸は効率よく微生物の細胞内に透過できるようになります。透過した有機酸は、細胞内のpH を下げ、酵素を不活性化することで抗菌性を示します。そのため、酢酸や乳酸を一定量以上含有する発酵種を用いたパン生地では、保存料等を使用することなく、腐敗原因菌やカビの発生が抑制されます。また、これらの有機酸は保水性を高める性質もあり、パンの老化を遅延する効果があります。 http://www.aichi-inst.jp/shokuhin/other/up_docs/news1409-2.pdf 【発酵種の利用と生成する有機酸の特性】(あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター)
[12] https://www.nyusankin.or.jp/lactic/(一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会/発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会)